CHANGレポート タイ捨て子の現実
いまだに後を絶たない、捨て子の現実
2019年4月:タイ
「東南アジアのハブ」と称される首都バンコク。
ASEAN(東南アジア諸国連合)の物価の高い都市のランキングでは、シンガポールについで2位。
平均生活費や家賃も東京と比較すると、だいたい6割くらいとなってきました。
モダンな高層ビルやショッピングモールが次々と建設をされ、今や正にバンコクは大都会の一面もあります。
過去にはストリートチルドレンや児童買春、捨て子、貧困のイメージも強くありましたが、近年のこの大都市だけを見ていると、そんな時代は遠い昔の話に思えてくるかもしれません。
しかし、実際は現在においても同様のことは後を絶たないのです。
2018年3月、協力団体タイの子供財団が運営する保護施設を訪問した時のことです。
初めて見る生後7ヵ月の赤ちゃんがいました。先生から話を聞いてみると、この赤ちゃんはつい先日、路上に捨てられていたというのです。
たまたま車で通りかかった人が見付けてくれて、直ぐに病院に運んでくれたことが幸いでした。
もしも発見が遅れたら、最悪の事態も免れなかったかもしれません。
病院からの紹介でこの施設で保護されることになり、今後の生活に関しては安心です。
しかし、このようにいまだに捨て子が後を絶たないことが現実なのです。
この施設だけでも92人の幼児が生活をしているのです。
この全員が捨て子というわけではありませんが、何割かは捨てられていた子です。
そうでない子も、多くの原因は貧困、経済的な理由で子供を育てられない家庭から保護しているのです。
首都バンコクで私たちが訪問している施設だけでも、子供が50人の施設、100人の施設もあります。
隣のノンタブリ県の一つの地域はいくつもの孤児院が密集していて、そこには200人、300人、350人と大規模で、中には女の子だけで400人を超える施設もあります。
更にバンコクから3時間ほど車を走らせたところには、2千人の子ども達が暮らすお寺もあります。
これらの施設の訪問を続けていますが、国の発展に伴って、保護する子供の数が減っているということは全くありません。
その数は確実に増えているのです。
バンコクは大都会に見えますが、高層ビルの間には一日を寝ながら過ごす人、駅を降りれば物乞いをする人々が何人もいます。
障害を持っている人や、赤ちゃんを抱きながらの人もいます。
バンコク屈指のビジネス街があるスクンビット駅のとなりのエリアには、タイ最大のクロントゥイスラムがあり、そこには10万人の経済的弱者が暮らしているのです。
一部の地域の発展は、必ず格差と貧困を生み出し、そこにはスラム街が形成される仕組みとなっているのです。
発展の陰で苦しんでいる人々がたくさんいて、その子ども達こそが最大の被害者となっているのが現実なのです。