タイ概要と子どもデータ
タイ王国概要
(出典:外務省)
国旗 | |
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首都 | バンコク |
面積 | 51万4千km2(日本の約1.4倍) |
人口 | 6,593万人(2010年 タイ国勢調査) |
民族 | 大多数がタイ族。その他,華人,マレー族等 |
言語 | タイ語 |
宗教 | 仏教94%、イスラム教5% |
タイの歴史と社会情勢 ~子供に関わる問題は~
タイは、13世紀のスコータイ王朝により、ほぼ現在の地域に国として成立し、その後アユタヤ王朝、トンブリー王朝を経て、現在のチャックリー王朝に引き継がれています。
伝統的に柔軟な全方位外交を展開して、東南アジアの中で唯一、欧米諸国の植民地にならず独立を守った国です。
メコン地域では、唯一のASEAN原加盟国で、人口規模でも経済水準の高さでも、この地域で群を抜いています。
タイから見ると日本は、貿易額、投資額、援助額ともに第1位であり、非常に緊密な関係を築いています。
また、日本にとってタイは、東南アジア地域の重要な生産拠点であり、多くの日本企業が進出しています。
2007年には、日・タイ経済連携協定が結ばれ、また、日タイ修好120周年を迎えて、ますます交流が盛んとなりました。
首都バンコクを中心に目覚ましい発展を遂げ続けているタイですが、その一方で政治混乱も続いています。
タクシン派と反タクシン派の激しい衝突が繰り返されており、2014年に於いても非常税対宣言や外出禁止令が発令されるなど、予断を許さない状態が続いておりました。
2014年5月、収まらない混乱の末に国軍は軍事クーデターを決行、政府高官を相次いで拘束、憲法と議会を廃止してプラユット陸軍司令官が暫定首相とする軍事政権が樹立されました。
この政治混乱の背景にはタイの格差問題もあります。
タクシン元首相を支持するのは主に農民や屋台主などの貧困層、反タクシン派は富裕層や中間層です。タイでは富裕層が5%、中間層が35%、貧困層が60%とも数えられており、その生活には著しい格差が見受けられます。
首都バンコク市内であっても、駅や公共の場で物乞いをして生計を立てている家族、または小さな子供が路上で物品を売っている姿に多く接することがあります。
私どもが訪問している孤児院に於いても、孤児となっている理由として、親がいないという子供だけでなく、経済的理由で子供を育てることができない状況、またはその状況から子供を捨ててしまう実態なども確認することができました。
政治混乱や格差問題に加え、児童労働、ストリートチルドレン、薬物、エイズ、衛生、教育問題など、子供を取り巻く環境には大きな改善が必要なのが実情です。
2016年10月13日、タイ国民から絶大な敬愛を受け続けたラーマ9世(プミポン国王)が崩御(ご逝去)、在位70年のご功績とその慈悲深いお人柄を偲び、タイ全土は大変な悲しみに包まれました。
同年の12月にはラーマ9世の長男であるワチラーロンコーン氏が、ラーマ10世として新国王に即位し、現在に至っております。
また2014年より軍が主導する暫定政権が続いていましたが、2019年3月に民政復帰となる総選挙が8年ぶりに行われました。
政治混乱、新国王、新政権、と大きな転換期を迎えている中、私たちも変化に気付くことが多々でてきました。
2018年からタイの殆どの孤児院では“子供の撮影禁止”が徹底されてきました。また“寄付金を募集することを表現できなくなった”との話をしてくれた方もいました。
私たちもこうした変化や方針に順応しながら、しっかりと活動を続けていくことが大切な時期となっているのです。
写真で見るタイ
高層ビルが立ち並ぶ首都バンコク。
ホテルやショッピングモールも次々と建設されています。
世界有数の渋滞都市、同じ距離でも渋滞に巻き込まれると数時間の遅れが出ます。
仏教信仰が厚く、多くの煌びやかな寺院が世界中の観光客を魅了します。
微笑みの国と言われ、笑顔をとても大切にしています。
奥深い歴史があるアユタヤ遺跡。
2016年10月、国民からの敬愛を受け続けたラーマ9世(プミポン国王)が崩御
ラーマ9世の後継として即位した、ラーマ10世(ワチラーロンコーン国王)
駅の階段で寝ている子ども達。
この女性は、一日をここで過ごしています。
物売りの少年。本来なら学校に行くはずの時間です。
コンビニエンスストアの前にずっと座っている女性。
障害を持つ方は、空き缶を置いて生活費を得ています。
タイの子供データ
(出典:Unisef)
基本統計
総人口 | 69122 | (1000人) | 2010 |
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5歳未満人口 | 4361 | (1000人) | 2010 |
18歳未満人口 | 17325 | (1000人) | 2010 |
年間出生数 | 838 | (1000人) | 2010 |
人口の年間増加率 | 1 | (%) | 1990-2010 |
出生時の平均寿命 | 74 | (年) | 2010 |
ひとりあたりのGNI | 4210 | (米ドル) | 2010 |
子どもの死亡率
乳児(1歳未満児)死亡率 | 11 | (出生1000人当たり) | 2010 |
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5歳未満児死亡率 | 13 | (出生1000人当たり) | 2010 |
5歳未満児の年間死亡数 | 11 | (1000人) | 2010 |
妊娠と出産
合計特殊出生率 | 1.6 | (人) | 2006 |
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避妊法の普及率 | 80 | (%) | 2006-2010* |
妊産婦死亡率 | 48 | (出生10万人当たり) | 2008 |
専門技術者が付き添う出産の比率 | 100 | (%) | 2006-2010* |
予防接種
結核(BCG)の予防接種を受けた1歳児の比率 | 99 | (%) | 2010 |
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3種混合予防接種を受けた1歳児の比率 | 99 | (%) | 2010 |
ポリオの予防接種を受けた1歳児の比率 | 99 | (%) | 2010 |
はしかの予防接種を受けた1歳児の比率 | 98 | (%) | 2010 |
破傷風から保護される新生児 | 91 | (%) | 2010 |
政府資金による定期EPI用ワクチンの購入率 | 95 | (%) | 2010 |
水と衛生
改善された水源を利用する人の比率
全国 | 100 | (%) | 2008 |
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都市 | 100 | (%) | 2008 |
農村 | 99 | (%) | 2008 |
適切な衛生施設を利用する人の比率
全国 | 89 | (%) | 2008 |
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都市 | 92 | (%) | 2008 |
農村 | 82 | (%) | 2008 |
栄養
低出生体重児出生率 | 7 | (%) | 2006-2010* |
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5歳未満の中・重度の低体重児の比率 | 7 | (%) | 2006-2010* |
ビタミンAの補給率(6~59ケ月児) | - | (%) | 2010 |
ヨード添加塩を使う世帯 | 47 | (%) | 2006-2010* |
教育(識字率・就学率)
成人の総識字率 | 94 | (%) | 2005-2010* |
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若者(15-24歳)の識字率 | 男性 98、女性 98 | (%) | 2005-2010* |
女性成人の識字率の対男性比 | 96 | (%) | 2005-2010* |
初等教育純就学率 | 男子 91、女子 89 | (%) | 2007-2010* |
小学校に入学した子どもが最終学年まで残る率 | - | (%) | 2006-2009* |
中等教育純就学率 | 男子 68、女子 77 | (%) | 2007-2010* |
タイ:子供に関する問題を考える
(出典:Unisef)
国内出稼ぎによる子どもの成長への影響を調査
親と暮らしていない子どもは300万人以上
【2014年6月23日 バンコク発】
タイの子どもたちの約21%にあたる300万人以上の子どもたちが、親が国内に出稼ぎに行っているため、両親またはどちらかの親と暮らしていないことがわかりました。
ユニセフは、本日、こうした現象は子どもたちの成長と健康に長期にわたって影響を及ぼしかねないと発表しました。
両親いずれかと暮らしていない子ども300万人
ユニセフの支援を受けて、タイの国家統計局が2012年に実施した最新のMICS調査(Multiple Indicator Cluster Survey:複数指標クラスター調査)の結果、タイ北東部だけでも、30%近く(3人にひとり)の子どもたちは、親がタイのほかの地域に出稼ぎをしているために、両親のいずれかと暮らさずに他の人に面倒をみてもらっていることが明らかになりました。
国内での出稼ぎが乳幼児期の成長に与える影響について、実施中の研究の第一段階の結果発表にあたり、ユニセフ・タイ事務所の社会政策チーフのアンドリュー・クレイポルは、次のように述べました。
「タイで親と暮らせていない子どもの割合は、ほかの国々と比べて、明らかに高く、大いに懸念すべき状況です。
タイの人々は、乳幼児の両親が出稼ぎに行った場合、祖父母やほかの人が面倒をみることを当たり前だと考えています。
国内に出稼ぎに出ている人は極めて多く、MICS調査が実施されている同様の国々とは、規模が異なります」と述べました。
MICS調査の2012年データによると、両親と共に暮らしていない子どもの割合は、ラオス(5%)、ベトナム(4.4%)、コスタリカ(3.4%)、ナイジェリア(6.5%)となっており、21%のタイとは大きな開きがあります。
精神面、家計面での影響も
「出稼ぎによる乳幼児期の健康と成長への影響-長期的混合式調査:(原題:The Impact of Internal Migration on Early Childhood Well-being and Development: a Longitudinal and Mixed-Method Study)」なる新たな調査では、両親またはいずれかの親と暮らしていない0~3歳の子ども1,000人を対象に調査を実施。
親と暮らさないことで、子どもたちの健康と成長へ生じる長期的な影響を調べました。
調査は、ユニセフの支援を受けて、マヒドル大学人口社会研究所(Mahidol University’s Institute for Population and Social Research)が2013年より開始。
タイでは、今回の調査で初めて、親の出稼ぎによる乳幼児期の成長への影響を長期にわたって調べられました。
また、今回、出稼ぎが両親に代わって面倒をみる人に、精神面、家計面で与える影響も調査されました。
今回の調査のチームリーダーを務めるマヒドル大学人公社化研究所のアリー・ジャムパカレ・准教授は、調査の1年目の結果を引用しながら「両親と暮らしていない子どもたちのおよそ90%は、祖父母と生活しています。
祖父母の大半は、小学校レベルの教育しか受けていないことがわかりました。
また、大半は祖父母になりますが、 子どもたちの面倒をみている人の約36%が、精神的な問題を抱えている恐れがあることがわかりました」と述べました。
両親と暮らしていない子ども25%に発育の遅れ
初期段階の調査の結果、両親と暮らしていない子どもの約25%に、発育の遅れがみられるといいます。
両親と暮らす子どもで発育の遅れがみられるのは16%です。
また、両親と暮らしていない子どもには、特に言語面での発育の遅れが顕著となっています。
調査では、父親が出稼ぎに出ている場合、父親の約40%は、直近6ヶ月以内に送金をしていないことも判明。
また、父親のおよそ30%は、一度も子ども自身または子どもの面倒をみている人に連絡を取っていませんでした。
ユニセフのクレイポル社会政策チーフは「今回の調査で、出稼ぎが子どもの発育において与えうる負の影響への理解が高まると思います。
また、出稼ぎによって、長期にわたって親子が触れ合うことができません。
こうしたことで、子どもたちや両親、面倒を見ている人たちが受けている社会的、感情的な影響も明らかになるでしょう」 と述べました。
本調査は、引き続き調査対象となっている1,000人の子どもたちを、今後2年にわたって調査し最終結果を、2016年はじめに発表する予定です。