CHANGレポート タイ知育教育の推進
知育教育と、甘えることの大切さ
2019年4月:タイ
このタイの子供財団とは、協働活動として、発達障害を持つ子供たちの発育へ効果があるとされる、知育教育の実施と推進に取り組んでいます。
捨てられてしまった子供や、虐待を受けていた子供、望まれないで生まれた子供の中には、知能や行動に障害を抱える子がいます。
それは言葉や動作の遅れ、注意力や集中力がない、自分傷つけてしまう、笑顔がないなど、その症状は様々です。
この原因は、母体にいた時から働いている“感覚の障害”による場合があります。
逆境の中で生まれ育った子供は、心の奥底に深い悲しみを抱えていて、親から抱っこされたり、手をつないだり、触れ合うことでの愛情が大きく不足しています。
無意識のうちから愛情を通じて得る、見たり、聞いたり、触れたりの“感覚”は子供の成長にとても重要なのです。
この治療・発達に効果があるのが、私たちが行う知育教育です。
おもちゃを使いながら、ゲームをしながら、触れ合いながら、子供が「楽しいな」「やってみたいな」と自主的に行うリハビリテーションで、子供の成長を促進するのです。
確かに、生まれながらに放っておかれたら、または親からの恐怖に怯えていたら、本来幼少期に育つべき言葉や表情、行動が抑えられてしまうでしょう。
これが対人恐怖であったり、言語や行動の遅れがでたり、自分自身を表現できなかったり、成長に障害が生じてしまうのです。
実際に私たちが訪問を始めたころは、多くの子ども達が私たちに対して無表情だったのを覚えております。
他の国の子ども達の多くは、人見知りなく、遠慮なく飛びついてくる中、ここの子ども達は殆ど反応がありませんでした。
また、授業中や休み時間であっても、ボーっと一点を見つめて座っているだけの子もいましたし、中には寝転がって授業を受けている子もいました。
パズルや積み木、玩具を使う知育教育が「楽しい」と子ども達が言ってくれるようになり、多くの子ども達に笑顔が見られるようになりました。
子供同士でもおしゃべりをしながら、時にはケンカもしながら知育学習を楽しんでいるのです。
こうした感情表現ができるようになったことは、本当に大きな成長だと感じています。
この子たちは、幼少期に親からの愛情を受けることなく育ちました。
笑うことも、甘えることも、泣くこともできない、自分を出す場所がどこにもないという圧迫された環境で、幼児にとって、とても大切なものを抑えながら年数を過ごしてきたのです。
ここで生活をするようになり、先生と接するうちに、子供が持つ本来の性質を出してくれるようになるのでしょう。
ここの先生たちは絶対に怒りません。注意することはあっても感情的になることはありません。
いつも笑顔で子ども達と接し、抱っこしたり、手をつないだり、コミュニケーションを大切にしながら育てていくのです。
そして授業中は真剣な表情で子供を指導しているのです。
いつしか子ども達にとって先生は絶対的な存在となります。
先生に抱き付いて離れない子ども達、幼児のように甘えている姿をたくさん見てきました。
そして私たちも何度も訪問するうちに、そうした存在に近づけたのなら嬉しく思います。
もう小学校の高学年になるような男の子が抱き付いてきて、顔をなめてくるようなこと多々あり、最初はちょっと戸惑いましたが、先生と同じような安心感を持ってくれたなら何よりです。
これは幼少期に甘えることができなかった反動です。
人間は幼児期に甘えることはとても大切なことで、成長する過程において、徹底的に甘えることができる時期が絶対に必要だということを実感しております。
この施設は安心して暮らせること、先生は絶対に怒らないこと、真剣に教えてくれること、これらを徹底的に理解してもらって、その次の段階として教育があるのでしょう。
先ずは思いっきり甘えてもらうこと。そしてこの教育を通じて、笑ったり、怒ったり、泣いたり、感情を出せるようになること。
これが自然な育ち方なのです。これからも知育教育を通じて、この子ども達の成長に繋がるよう、タイの子供財団とは強い連携で取り組んでいきます。